前払金の業務プロセスと前払金のプロセスを使用する上で必要なカスタマイズを説明します。
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前払金(Advanced Payment)とは
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前払金(Advanced Payment)とは、商品の引き渡しやサービスの提供を受ける前に支払う代金のことである。
商品やサービスを受ける権利が残っているため、資産科目として用いられる。一般的に、前払金は契約資産(Contract Asset)の一部として扱われることが多い。
仮に仕入先が商品やサービスの提供ができなくなってしまった場合、前払金は返還される。
■前払金支払の仕訳
Dr. 前払金 / Cr. 現預金
前払金プロセスに必要なカスタマイズ
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前払金プロセスを使用するための方法として、特殊仕訳取引がある。
特殊仕訳取引とは、債務明細を計上する際に仕入先コードと併せて特殊仕訳コードを入力することで、仕入先コードに紐付けた統制勘定を変更する機能である。
例えば、仕入先コードに紐付けた統制勘定が「買掛金」だとする。 債務計上時に、特殊仕訳コード「A」を指定すると、伝票計上される際に統制勘定「買掛金」→「前払金」に打ち替わる。※勘定科目は例 特殊仕訳取引を行うためには、特殊仕訳コードと特殊仕訳コードに対して統制勘定のカスタマイズが必要となるので、後述する。
仕入先特殊仕訳のカスタマイズ
■SPROメニュー 財務会計 > 債権管理および債務管理 > 会計トランザクション > 仕入先前払金 > 定義:仕入先前払金用の統制勘定 ■Tr-cd OBYR:更新 財務会計システム設定 特殊仕訳 - 一覧 ※得意先特殊仕訳の場合はOBXR
第一画面では、特殊仕訳コードの定義を行う。仕入先の場合、勘定タイプは「K」となる。※得意先の場合は「D」
なお、前払金の特殊仕訳コードはSAP標準で「A」と「F」が用意されている。
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第二画面では、特殊仕訳コードに対して統制勘定の設定を行う。
基本的には、統制勘定(打ち替え元)と特殊勘定コード(打ち替え先)を設定しておけば問題ない。
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前払金の業務プロセス
【前払金プロセスの全体観】
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1.前払金請求(F-47)
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仕入先から商品やサービスを購入し前払金の請求が来たタイミングで、前払金請求を行う。
前払金請求で計上される伝票は”備忘明細”と言われ、一明細のみの特殊な伝票である。補助元帳のみに転記され、総勘定元帳には転記されない。
2.前払金支払(F110 / F-48)
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仕入先へ前払金を支払するタイミングで、前払金支払を行う。
前払金の計上および出金を行う。前払金支払には以下の2パターンがある。
- F110 :自動支払処理(システム自動処理)
- F-48 :前払金転記(マニュアル処理)
なお、1.で計上した備忘明細は決済される。マニュアル処理の場合は備忘明細を選択して決済する。(備忘明細の前払金明細が消込済となる)
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3.債務計上(FV60 / MIRO)
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商品やサービスが提供されたタイミングで、債務の計上を行う。
債務の計上は以下の2パターンがある。
- FIから計上するパターン
- MM経由で計上するパターン
3-1.FIから計上するパターン
Tr-cd:FV60から、基本的には経理担当者が債権を計上する。
3-2.MM経由で計上するパターン
MM経由で債務計上する流れは下記の通り。請求書照合のタイミングで債務が自動で計上される。
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4.前払金消込(F-54)
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前払金の消込を行う。
相手明細には、3.で計上した未消込の買掛金明細を選択する。
Tr-cd:FB05でも代替可能
5.支払転記(F-53)
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「買掛金 – 前払金」の差額分の支払を行う。
今回の例の場合、買掛金50,000円 – 前払金30,000円 = 20,000円をまだ支払っていないため、追加で支払をする必要がある。
なお、支払転記の際は3.と4.で計上した未消込の買掛金明細を選択して消込する。
以上。
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