手形支払の業務プロセスと手形支払に必要なカスタマイズについて解説します。
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支払手形(Note Payable)とは
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支払手形とは、決められた支払期日に代金を支払うことを約束するために作成される証書のこと。
支払手形には、約束手形と為替手形の2種類がある。
約束手形
約束手形は、振出人と受取人の間で代金の受け渡しをするための手形のこと。約束手形を振り出した振出人は、手形に記載された金額を期日までに受取人に支払う必要がある。
手形の期日が来たら、受取人は銀行に約束手形を持ち込み代金を受け取る。受取人が銀行に手形を持ち込んだタイミングで、振出人の口座から代金が引き落とされる。
為替手形
為替手形は、振出人と受取人、名宛人(支払人)の間で代金の受け渡しをするための手形のこと。振出人の代わりに、名宛人が代金を支払う。
主に、振出人が売掛金のある名宛人に対して、受取人への代金支払を依頼する場合に使用される。(手形を代わりに支払ってもらうことで売掛金を帳消しにするイメージ)
ただし、業務上使用されるケースは少なく、基本的には約束手形がほとんどである。
手形支払に必要なカスタマイズ
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特殊仕訳のカスタマイズ
手形支払プロセスを使用するための方法として、特殊仕訳取引がある。
特殊仕訳取引とは、債務明細を計上する際に仕入先コードと併せて特殊仕訳コードを入力することで、仕入先コードに紐付けた統制勘定を変更する機能である。
例えば、仕入先コードに紐付けた統制勘定が「買掛金」だとする。 債務計上時に、特殊仕訳コード「W」を指定すると、伝票計上される際に統制勘定「買掛金」→「支払手形」に打ち替わるイメージ。
■SPROメニュー 財務会計 > 債権管理および債務管理 > 会計トランザクション > 銀行関連会計 > 取引 > 手形取引 > 支払手形 > 登録:支払手形 > 定義:支払手形の代替統制勘定 ■Tr-cd OBYM:照会 財務会計システム設定 特殊仕訳 - 一覧
第一画面では、特殊仕訳コードの定義を行う。仕入先の場合、勘定タイプは「K」となる。※得意先の場合は「D」
なお、支払手形の特殊仕訳コードはSAP標準で「W」が用意されている。
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第二画面では、特殊仕訳コードに対して統制勘定の設定を行う。
基本的には、統制勘定(打ち替え元)と特殊勘定コード(打ち替え先)を設定しておけば問題ない。
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戻り手形勘定のカスタマイズ
■SPROメニュー 財務会計 > 債権管理および債務管理 > 会計トランザクション > 銀行関連会計 > 取引 > 手形取引 > 支払手形 > 支払手形期日処理 > 定義:支払手形の代替統制勘定 ■Tr-cd S_ALR_87002691:戻り手形勘定定義
本カスタマイズでは、Tr-cd:FBWDで自動計上される現預金勘定の設定を行う。
取引銀行×口座ID×支払方法単位で設定が可能。
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支払処理関連のカスタマイズ
■Tr-cd FBZP:カスタマイジング:支払プログラム更新
自動支払処理に関連するカスタマイズはTr-cd:FBZPから行う。
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手形支払の業務プロセス
【手形支払業務の全体観】
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債務計上:Tr-cd:FV60
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商品やサービスが提供されたタイミングで、債務の計上を行う。
債務の計上は以下の2パターンがある。
- FIから計上するパターン
- MM経由で計上するパターン
手形振出(支払処理):Tr-cd:F110
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手形の振出を行う。手形振出はあくまでも受取人に対して手形を振り出す(渡す)だけなので、このタイミングで現預金の残高は動かない。
AP(支払手形)明細には「振出日」項目があるが、この項目には手形を振り出した日付が入る。基本的には、AP(買掛金)明細の支払基準日と同じ日付が入ると理解しておけば良い。
手形支払(手形決済):Tr-cd:FBWD
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手形の期日が来たタイミングで、手形支払および手形勘定の決済を行う。
処理を行うと現預金の残高が動き、AP(支払手形)および支払手形仮勘定が決済(消込)される。
AP(支払手形)明細には「期日」項目があるが、この項目には手形の支払期日が入る。明細の支払期日を確認し、期日に遅れないように手形支払を行う必要がある。
【補足】手形分割
紙手形の場合は、印紙税の金額を最小化するために手形の分割を行うことがある。
SAP標準では手形分割機能が用意されていないため、SAPでアドオンを実装するか、別システムで処理を行うケースがほとんど。
なお、電子手形の場合は印紙税はかからない。
■手形分割の例 <前提> 1,200万円の手形 → 印紙税4,000円 400万円の手形 → 印紙税1,000円 上記前提の場合、1,200万円の手形を400万円の手形3つに分割した方が、印紙税が1,000円安くなる。
以上。
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